相続登記手続
不動産(土地・建物・マンションなど)を持っておられる方がなくなれた後、その不動産の名義を変更することを相続登記と言います。相続登記に関しては、相続税と違い、○○以内にやらなくてはいけないという期限はありません。また不動産の所有者が亡くなられても、相続登記(不動産の名義変更)をする義務はありません。ただし、相続登記(不動産の名義変更)をしないと、不動産の売却や不動産に担保を設定できなくなったり、登記を放置している間に相続権のある人が次第に増えて遺産分割協議の成立が難しくなったり、登記に必要な書類が多くなったり等の多くのデメリットがありますので、なるべく早く相続登記(不動産の名義変更)をすることを強く推奨します。
相続登記はご自分でもできますが、専門的な知識や多くの時間・労力を要します。ご自分で相続登記をしない場合は、経験豊富な当事務所の司法書士にご依頼ください。
相続登記手続きの流れ
遺言書がある場合とない場合では相続手続きの流れが変わってきます。ここでは、遺言書のない場合の相続手続きの流れについて説明します。
1.相続の発生
相続はどなたかが亡くなれたことにより発生します。遺族は多くの手続きを行う必要があります。まず、亡くなれた方の住所地の市区町村役場に1週間以内に死亡届を提出することが最初の手続きになります。国民年金や企業年金、生命保険などに加入している場合にはそれぞれの窓口である役所、勤務先や保険会社に連絡し下さい。
2.遺言書の有無を確認
遺言書の有無によって、今後の相続手続きの流れに大きな違いが生じます。自宅や貸金庫など遺言書のありそうな場所を探しましょう。遺言書が公正証書遺言の場合、公証役場で公正証書遺言検索システムを利用すると便利です。遺言書が自筆証書遺言の場合、家庭裁判所で検認(※1)の手続きが必要になります。
3.相続人の調査・確定
遺言書がない場合、亡くなれた方の出生から死亡までの戸籍謄本等の書類を集める必要があります。相続人が誰であるかを特定するためです。この書類をもとに相続関係説明図(家計図)を作成します。
4.相続財産債務の調査・確定
亡くなれた方の相続財産・債務をなるべく早く特定し評価します。相続人は、亡くなれた方の権利と義務の両方を相続します。プラスの財産(不動産・預貯金・株式など)だけではなく、マイナスの財産(借金など)も相続するので、ご注意ください。
5.相続放棄あるいは限定承認(3ヶ月以内※2)
マイナスの財産の方が多い場合、あるいは多いと思われる場合に「相続の放棄」あるいは「限定承認」のどちらかを選択することできます。相続の放棄は、亡くなれた方の権利・義務の承継を拒否することをいいます。限定承認は相続によって得た財産の限度においてのみ債務を相続する方法です。相続の放棄は相続人1人でも数人が共同でできますが、限定承認は相続人全員でやる必要があります。
6.遺産分割協議、遺産分割協議書の作成
誰がどの財産をどれだけ相続するのかを相続人全員で話し合う「遺産分割協議」を行い、その内容を記載した遺産分割協議書を作成します。相続登記をはじめ、名義変更手続きや相続税の申告の際に、遺産分割協議書を作成します。もし協議でまとまらない場合には家庭裁判所で「調停」、それでもまとまらない場合には「審判」による分割を行います。
7.相続税に関すること(10ヶ月以内※3)
相続税は原則として、10ヶ月以内に納付します。10ヶ月以内に納付しないと延滞税などが発生し、納税者にとって不利になりますので、ご注意ください。平成27年1月1日より相続税の基礎控除額が縮小されましたので、相続税を納める人数が大幅に増えました。
8.不動産の名義変更(相続登記)
遺産分割協議に内容に従って、不動産の名義変更(相続登記)を行います。相続登記をしないと不動産の売却や不動産に担保を設定ができない等の多くのデメリットが発生しますので、なるべく早く相続登記をすることをお勧めします。それ以外に預貯金・株式・電気・ガス・水道など様々な名義変更手続きが必要になります。
※1 遺言書の存在を明確にし、遺言書の偽造・変造を防止するための手続き
※2 「3ヶ月以内」とは、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内
※3 「10ヶ月以内」とは、相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内
手続きの期限とその提出先
手続き | 期限 | 提出先 |
死亡届 | 7日以内 |
亡くなれた方の住所地の 市区町村役場 |
相続の放棄または 限定承認 |
3ヶ月以内 |
亡くなれた方の住所地の 家庭裁判所 |
所得税の申告と納付 (準確定申告) |
4か月以内 | 亡くなれた方の住所地の 税務署 |
相続税の申告と納付 | 10ヶ月以内 | 亡くなれた方の住所地の 税務署 |